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【告知】西澤健一 協奏曲作品の夕べ

 新型コロナウイルスが世界に打撃を与え始めた2020年5月に完成し、初演が延期されていた『オーボエと弦楽合奏のための協奏曲』、日本とウクライナの国交樹立30周年を記念し、2022年10月にウクライナで初演されるはずだった『2つのヴァイオリンのための協奏曲』、今公演のために書き下ろ...

2016年10月10日月曜日

『連祷』について

欠陥だけを取り出してリストの揚げ足とりをする人は、その背後に隠されている本質までは深く見ていないのです。ところで、公平無私な評価というものは、本質を認識することなしには考えられません。(バルトーク『リストに関する諸問題』1938)

 8月23日、晩。
 池袋の西口、少し奥まったところにあるマレー料理店「マレーチャン」で、僕はライターの井内千穂氏とともに遅めの食事を取っていた。食事といっても前菜ばかりの軽いもので、ぱりぱりとえびせんを囓りながらタイガーとシンハーの瓶をお互い1本ずつ飲んだだけだった。二人とも深夜に書き物を控えていたせいである。ここの女将の濃さと言ったらウエストゲートパークのヤンキーたちの比ではない。が、この日は姿を見なかった。

 この直前、芸術劇場の大ホールでは東京室内管弦楽団のコンサートが催されていた。
 終演後、僕と井内氏は二人でこの日の作曲家に挨拶した。彼は関係者にもみくちゃにされていて、会話らしい会話はほとんどできなかった。僕は祝福の言葉とともに「『好き』がたくさん入ってましたね」と申し上げた。彼は満面の笑みで「全部詰め込んだよ」と答えていた。