2021年3月30日火曜日

【動画】西澤健一作品展『日本語の季節』


  昨年10月23日、豊洲シビックホールで開催された「西澤健一作品展『日本語の季節』」の模様をYouTubeにて公開致しました。日本語、英語字幕の用意がございます。映像にもちゃんと手を掛けました。ぜひ多くの方にご覧いただければと思います。プログラム・ノートも250円に値下げしましたので、鑑賞の手引きとしてどうぞご利用ください。

 This movie is a recording of the concert "Kenichi Nishizawa's Works : Seasons of Japanese Language" held on October 23, 2020. As the title says, there are only songs written in Japanese on it, but English subtitles are available. My friends, Julia and Yukiro translated them (Thanks!). I hope you enjoy it. Share, donate, welcome!

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◇西澤健一作品展「日本語の季節」

 2020年10月23日(金) 17時30分開演 

 於・豊洲シビックセンターホール

 Oct. 23 2020 at Toyosu civic center hall, Tokyo

◆出演

 西澤健一(作曲・ピアノ)

 新宮由理(メゾ・ソプラノ)荒井章乃(ヴァイオリン)

 Kenichi Nishizawa : Piano

 Yuri Shingu : Mezzo-soprano / Ayano Arai : Violin


◆プログラム

 童謡物語「かくれんぼ」Six Traditional Japanese Children's songs

  ・かくれんぼ ・あんたがたどこさ ・通りゃんせ

  ・ずいずいずっころばし ・ないしょ話 ・揺籃のうた

 4つの小さなメロディ Four Little Melodies for Violin and Piano op.70

 中原中也の詩による4つの歌曲 Four Songs after Chuya Nakahara op.92

  ・春の日の歌 ・いちじくの葉 ・秋の日 ・冷たい夜

 心願の国(初演)Land of Heart's Desire op.106 (Premiere)

 無伴奏ヴァイオリンのための小ソナタ Little Sonata for Violin Solo op.107

 唱歌伴奏集 Shoka Accompaniments

  ・朧月夜 ・われは海の子 ・虫のこえ ・冬景色 ・ふるさと

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 今回、字幕をつくるにあたり、中原中也の良い訳がないか探したところ、すでに絶版になっているとの由。それだけでなく、外国語に翻訳するのが大変難しく、よって成果を上げた翻訳もなく、海外では日本語文学学者の間でわずかに知られている程度だということを初めて知りました。驚くと同時に、妙に納得したんです。あの中也自身が目にホワイトを垂らしたクッソあざとい激盛れ写真にみんなコロリと騙されて、なんとなく国民的詩人っぽい扱いになってますけど、ダダイズム少年やってたくらいだし、彼の作品は一筋縄ではいかない。

 特に文語定型詩。古い和歌の技法を思わせるブリッジを連発して蔦のように伸びていく。蔓がいろいろな方向に伸びて、抽象世界に入っていく。ソネットなのに、ソネットとは違う肌触り。それを分かち書きで書くという変態っぷり。最近つくづく日本近代文学って奇跡だったんじゃないかと思うようになりました。それをちっとも大事にしない我々現代人…は、ともかく。作曲したときに観察したこれらのことは、日本語のまま取り上げるから問題にならなかっただけで、むしろあらぬ方向に伸びた蔓を描けば音楽が成り立つからありがたいくらいで。翻訳には難儀するでしょうねえ。したくないですねえ。でも、動画のためには翻訳しなきゃいけない。

 そこで、僕が現代口語に訳したものを、僕のお友達ジュリアに渡して翻訳してもらうことにしたんです。専門家も苦労する日本語文を原文のまま渡されても途方に暮れるだけでしょうし。とは言え、口語にする時点で蔓の部分をぱちぱちと間引かなきゃいけない。四方にぬろぬろと伸びた触手をたったひとつに絞らなきゃいけない。責任重大。訳し終えたジュリアが自分で訳した英文を読んで「…ビョークの歌詞みたい」とつぶやいたので、この試みはひょっとして成功したんじゃないか、と思っています。ありがとうジュリア。

 動画をご覧になる際は、僕の友達が苦労した字幕にもどうぞご注目ください。

2021年3月3日水曜日

寺澤ひろみ「アニヴェルゼル」、柴田高明マンドリンリサイタル ほか

 今後のいくつかの予定をご紹介します。

 3月20日「アニヴェルゼル~ハーモニカ・コンサート~」では、「おんな酒場放浪記」でもお馴染みのハーモニカ奏者、寺澤ひろみさんと共演します。この公演には『蔦の門 ハーモニカのための』『クロマチック・ハーモニカとピアノのための小ソナタ』という2つの新作を用意しました。とりわけ『蔦の門』…これは複音ハーモニカ独奏のための作品ですが…は、ちょっぴり誇張が許されるなら、複音ハーモニカという分野のために重要なレパートリーを提供できたと思います。先日、はじめてのリハーサルで、寺澤さんが熱を込めてこの作品を語ってくれたことで、僕も自信が持てました。近くて遠い楽器、ハーモニカの印象が刷新されると思います。

 4月17日「柴田高明マンドリン・リサイタル」には『4つの前奏曲』という新作を提供しました。これは、向こう3年間で計6人の作曲家に委嘱し、毎回古典とともにソロ作品のみでプログラミングするという、たいへん頭の下がる思いのする企画の一環。今回がその第一回目で、僕は露払い役を仰せつかりました。今回は田口和行氏による新作も発表されます。柴田さんとは2012年に『マンドリンと弦楽三重奏のためのコンチェルティーノ』を書いて以来、これが2作品目。僕の楽器の理解度も9年前よりいくらか上がったと思いますが、マンドリンの地位向上に挺身する柴田さんの熱意に応えるべく、頑張りました。

 4月30日「米津真浩・安嶋健太郎ピアノデュオ・リサイタル」では、2018年、仙台ピアノデュオの会のために書き下ろした『祝典ソナタ』が取り上げられます。まだまだ曲に恵まれていない2台ピアノという分野のレパートリーとなるよう願って書いた作品なので、早くも再演されることが素直に嬉しいです。アクの強い(と形容してすまぬ)実力者2人によってこの作品がどのように違う表情を見せるのか、僕も楽しみにしています。

 それから、3月8日「鈴木一成バスーン・リサイタル」…ここでこの演奏会に触れる理由は、まだちょっと大っぴらにはできませんが、ご来場くだされば、きっと分かります。

 それぞれの演奏会の詳細については、下記をご覧ください。

 このつらい現世を少しばかり忘れさせてくれる力が音楽には確かにあります。が、それには作家が現実の世界を呼吸していなければならない。どうして慰めの言葉を知らずして人を慰められましょうか。このような困難な時代においてもなお新作を書けること、旧作が再演されること。それはたいへん恵まれたことに違いありません。その幸福を、僕は僕なりの方法で社会に還元すべく、今後も精進していきたいと思います。

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アニヴェルセル~ハーモニカコンサート
  • 西澤健一/蔦の門 ハーモニカのための(初演)
  • 西澤健一/ハーモニカとピアノのための小ソナタ(初演)ほか
出演:寺澤ひろみ(ハーモニカ)西澤健一(ピアノ)
日時:2021年3月20日(土)15:00開演(14:30開場)
会場:タワーホール船堀 5階大ホール
料金:3,800円 要予約
お問い合わせ:タワーホール船堀 03-5676-2211


柴田高明マンドリンリサイタル〜無伴奏マンドリンの世界vol.1
(公財)青山音楽財団助成公演
《会場入場チケット》一般3000円 学生1500円(共に当日500円増)
4月17日(土)17:00開演 京都・バロックザールでの公演にご入場いただけます。
《動画視聴チケット》1500円

プログラム 
  •  西澤健一(1978-)  4つの前奏曲(新作初演)
  • ・田口和行(1982-) 蒼穹(新作初演)ほか
日時:2021年4月17日(土)17時開演
会場:青山音楽記念館(バロックザール)075-393-0011


米津真浩・安嶋健太郎ピアノデュオ・リサイタル
  • 西澤健一/祝典ソナタ ほか
出演:米津真浩、安嶋健太郎(ピアノ)
日時:2021年4月30日(金)19時開演
会場:ヤマハ銀座コンサートサロン
料金:一般4,000円 会員3,500円 学生3,000円 株式会社ヤマハミュージックリテイリング音楽教室在学生2,500円
お問い合わせ:ヤマハ銀座店 03-3572-3171(代表)


東京音楽コンクール入賞者リサイタル
Kazunari Suzuki Bassoon Recital
出演:鈴木一成(ファゴット)松山玲奈(ピアノ)
日時:2021年3月8日(月)19時開演
会場:東京文化会館小ホール
料金:一般3,500円 学生1,500円 東京文化会館友の会会員3,000円
チケットお申込み:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650

2021年2月7日日曜日

『オーバード』の評 Das Orchesterに掲載

 ホフマイスター社から出版されたオーボエ・ダモーレ/ファゴット/イングリッシュ・ホルンのための『オーバード』の評が、ドイツの音楽誌『Das Orchester』に掲載されました。楽譜はオーボエ・ダモーレ版ファゴット版イングリッシュ・ホルン版それぞれ、日本ダブルリード株式会社のオンラインショップでお求めになれます。

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 恋人たちの夜明けの別れ、トルバドゥールの歌。演奏家としてここに留まりたい。流れるようなカンティレーネで、何度も繰り返され、常に軽やかに変化し、美しい響きに包まれ、暖かさと優雅さに満ちている。

 作曲家の西澤健一は1978年東京に生まれる。15歳でピアノを始め、同時に独学で作曲を始める。音楽大学には1年しか在学していない。2013年に初演された交響曲と2017年に初演されたオペラのほかに、主に室内楽、独奏曲、ピアノ伴奏の器楽曲が100曲以上あり、多くの作品で日本の作曲賞を受賞している。

 この『オーバード』はホフマイスター社から出版された。サン=サーンスのオーボエ・ソナタにインスピレーションを得て、最初はオーボエ・ダモーレとピアノのために作られた。更にファゴット、イングリッシュ・ホルンのために編曲され、それぞれ楽器に合わせて嬰ヘ長調、ヘ長調、ニ長調となっている。

 オーバード…朝のセレナーデ…は、作曲者が書いているように、初日の出の燃えるような赤と紫色の空を映している。西澤はこの曲を2018年のニューイヤー・コンサートのために作曲し、自らピアノパートを務めた。

 管のパートは心地よい中間音域を緩やかに漂い、大きなスラーのメロディが印象的なピアノの響きに見事に支えられ、驚くようなハーモニーのなかに注がれ、二つの楽器が互いに溶け合っていく。

 上質な紙を使用し、音符の表記は読みやすく、メロディパートが見開きに収まっているおかげで譜めくりが不要なため、演奏していると楽しさが増してくる。

 作曲者による序文で、彼自身のことをいろいろと知ることができることもありがたい。出版社のサイトではピアノスコアの1ページ目が見られる。

 難易度としては、出版社は中級/上級としているが、これは「ヴィルトゥオーゾではないが要求が多い」と書き換えることができるだろう。

 5分ぎりぎりの長さで、短い瞑想のような印象を与える。瞑想の形式の中で、この作品はダブルリード文学を演じている。コンサートのプログラムの中でメインに加える作品として、または静かなアンコール作品として、あるいは音楽以外の催しで演奏する作品としても大変適している。(評者=アネッタ・ヴィンカー)